家に籠って音楽ばかり聴いている。ほとんど人に会わなかった昨年、幾つかのいい出会いがあった。ビル・エヴァンスのアルバムは結構持っていて同じ曲でも録音場所やセッションの相手で別物だがエヴァンスのピアノが霞むほどの曲は数少ない。ORIGINALは1960年台のアメリカ映画 "スパルタカス" のテーマ曲BSで昔見たスパルタカス、マイケル・ダグラスの父、カーク・ダグラスが若々しい。奴隷が腕っぷしで剣闘士にのし上がり、仲間を引き連れてローマに戦いを挑むというラッセル・クロウのグラディエーターのようなストーリーであるがこちらのほうが圧倒的に壮大なスケール。役者も当時の映画界オールスター共演ピーター・ユスティノフが渋くてかっこいい映画のポアロの若い頃だ、なんて考えながら見ていた。ちなみに大好きなデヴィット・スーシェは全てドラマ版(1989-2013)。劇中、テーマ曲は何度も流れているのだけれど、そんなに記憶に残るかなくらいの印象だった。ジャズが素晴らしいのは原曲を活かしつつ、至高の領域へと挑んでいける点だと思う。スパルタカスのテーマも数多くのアレンジがある。エヴァンスに限ってもセッション毎に別の曲。その中でもWhat's New での仕上がりは最高では無かろうか。エヴァンスのピアノも流石だがジェレミー・スタイグのフルートがとにかく刺さる。導入部のピアノソロが終わったあとのフルートの響きそこから始まるセッション、最初に聴いたとき鳥肌が止まらなかった。スパルタカスを刺したナイフのように、心に何度も突き刺さってくる。ジェレミーのことを知ったのは、ずっと大人になってから。奥方が日本人で晩年は横浜に住んでいたこと、割と最近亡くなったこと。もっと早くに知っていたら生の演奏を聴く機会もあったのだろうか。そう長くない人生で、他人と触れ合う機会は限られている。たとえ一期一会だとしても高みを目指した関わり合いが出来ればこんなの世でも素晴らしいのかな、などと思う。前の記事へ新しい記事